2025.06.14

子どもの個性を活かした自己表現の練習

投稿日時:2025.06.14
最終更新日時:2025.06.14

小学校受験において、多くの保護者の方が最も不安に感じるのが「面接」ではないでしょうか。特に、お子さまが自分らしさを表現できるかどうかという点で、多くの悩みを抱えていることと思います。

小学校受験の面接において、学校側が最も重視するのは「この子は楽しく学校生活を送ってくれるだろうか?」「ほかの生徒と仲良く関わり、お互い高め合える関係を築いてくれるだろうか?」という視点です。つまり、ペーパーテストの点数や暗記した模範回答よりも、お子さまの人となりや個性、そして自分らしい表現力が重要視されているのです。

しかし、現代の子どもたちは「自分の『心』を伝える言葉を持たない」と言われることがあります。キレル、ムカツクといった短絡的な表現に頼りがちで、豊かな感情表現や自分なりの考えを言葉にすることが苦手な傾向にあります。だからといって、子どもたちに「心」がないのではありません。トレーニングが少し不足しているだけなのです。

今回は、お子さんの個性を見つけ、それを活かした自己表現力を育てる方法を、最新の教育理論と実践的なアドバイスを交えながら詳しくご紹介します。

目次

小学校受験における自己表現の重要性

現代の面接で求められること

小学校受験の面接形式は時代とともに変化しています。従来の「正解を答える」スタイルから、より子どもの本質を見極める方向へと変わってきているのです。

面接官の先生方は、長年の経験から「目のキラキラ輝いた」生徒さんに通っていただきたいと考えています。これは、いわゆる「非認知能力の高い」生徒を求めているということです。非認知能力とは、IQのような数値で測れる認知能力とは異なり、意欲・協調性・粘り強さ・リーダーシップ・メタ認知といった、人間の気質や性格的な特徴のことを指します。

面接で見られる具体的なポイント

現役の小学校受験指導者によると、面接では以下のような点が重視されています:

子どもの自然な反応

  • 質問に対して自分なりに考えて答えているか
  • 困った時の対処法を身につけているか
  • 感情を適切に表現できるか
  • 他者との関わり方が自然で建設的か

家庭での教育の成果

  • 基本的な生活習慣が身についているか
  • 親子のコミュニケーションが良好か
  • 子どもが安心して自分を表現できる環境で育っているか

面接官は、付け焼刃の対策や暗記した回答を簡単に見抜きます。そのため、日頃からお子さまが自分らしく表現できる力を育てることが何より重要なのです。

個性を見つける:多重知能理論(MI理論)を活用して

多重知能理論の背景と意義

これまで「知能」というと、IQ(知能指数)で表される単一の能力として考えられてきました。しかし、ハーバード大学の心理学教授であるハワード・ガードナー氏は1983年、この考え方に疑問を投げかけました。

「読み書きや計算は得意でないが、音楽的な才能に長けている子」「運動能力に優れ、チームワークを大切にする子」「内向的だが深く物事を考える子」など、人間の能力は多様で複雑です。ガードナー氏は、知能を単一の指標で測ることの限界を指摘し、「知能は単一ではなく、主に8つあり、人はそれらすべてを働かせて生活している。8つのうちどの能力が優れているかが、個性につながる」という画期的な理論を提唱しました。

この多重知能理論(MI理論:Multiple Intelligence Theory)は、現在では世界中の教育現場で活用されており、子どもの可能性を最大限に引き出すための重要な指針となっています。

8つの知能の詳細

1. 言語的知能(Linguistic Intelligence)

言葉や文章を理解し、使いこなす能力です。話すこと、書くこと、読むことが得意で、語彙が豊富な子どもがこの知能に長けています。

特徴

  • 言葉遊びが好き
  • 物語を作るのが得意
  • 本をよく読む
  • 人の話をよく覚えている
  • しりとりや回文などを楽しむ

向いている活動:読み聞かせ、日記を書く、詩作、演劇

2. 論理・数学的知能(Logical-Mathematical Intelligence)

数字や論理的思考を扱う能力です。パターンを見つけたり、因果関係を理解したりすることが得意です。

特徴

  • 数字に興味を示す
  • 「なぜ?」「どうして?」とよく質問する
  • パズルや謎解きが好き
  • 物事を順序立てて考える
  • 実験や観察を楽しむ

向いている活動:科学実験、プログラミング、数学ゲーム、論理パズル

3. 視覚・空間的知能(Spatial Intelligence)

図形や空間を理解し、視覚的に物事を捉える能力です。絵を描いたり、立体的な構造を理解したりすることが得意です。

特徴

  • 絵を描くのが好き
  • ブロックや積み木で複雑な構造を作る
  • 地図を読むのが得意
  • 色彩感覚が豊か
  • 迷路を解くのが早い

向いている活動:絵画、工作、建築遊び、地図作り

4. 音楽・リズム的知能(Musical Intelligence)

音楽やリズムを感じ取り、表現する能力です。音の高低、リズム、メロディーに敏感です。

特徴

  • 歌うことが好き
  • リズムに合わせて体を動かす
  • 楽器に興味を示す
  • 音の違いに敏感
  • 覚えた歌を正確に歌える

向いている活動:楽器演奏、歌唱、作曲、ダンス

5. 身体・運動的知能(Bodily-Kinesthetic Intelligence)

体を使って表現したり、細かい作業を行ったりする能力です。スポーツや手先の器用さに現れます。

特徴

  • 体を動かすことが好き
  • 手先が器用
  • スポーツが得意
  • 踊りや身振り手振りで表現する
  • 触れることで理解が深まる

向いている活動:スポーツ、ダンス、工作、料理

6. 対人的知能(Interpersonal Intelligence)

他者とのコミュニケーション能力や、人の気持ちを理解する能力です。リーダーシップを発揮することもあります。

特徴

  • 友達作りが上手
  • 人の気持ちを察するのが得意
  • グループ活動で力を発揮する
  • 争いを仲裁することがある
  • 人と協力することを好む

向いている活動:チーム競技、グループ学習、演劇、ボランティア活動

7. 内省的知能(Intrapersonal Intelligence)

自分自身を理解し、内面と向き合う能力です。自己分析や感情のコントロールが得意です。

特徴

  • 一人の時間を大切にする
  • 自分の感情を理解している
  • 目標を立てて取り組むことができる
  • 深く考えることを好む
  • 自分なりの価値観を持っている

向いている活動:日記を書く、瞑想、読書、個人研究

8. 博物的知能(Naturalistic Intelligence)

自然や物事を分類・観察する能力です。動植物に興味を持ち、自然のパターンを見つけることが得意です。

特徴

  • 動物や植物に興味がある
  • 収集癖がある
  • 自然の中で過ごすことを好む
  • 分類や整理が得意
  • 天気や季節の変化に敏感

向いている活動:園芸、昆虫観察、コレクション、キャンプ

多重知能理論の重要な考え方

ガードナー氏は「多重知能理論のうち、ある知能が優れていれば他の知能は平凡である」と解説しています。つまり、得意不得意があって当たり前なのです。

また、8つの知能には優劣がないということも重要なポイントです。従来の教育では言語的知能と論理・数学的知能が重視されがちでしたが、音楽的知能や身体的知能、対人的知能なども同じように価値のある能力なのです。

どんな人にも必ず強みがあり、それは決してひとつとは限らず、8つの知能の中で複数あることもあります。自身の苦手分野ばかりが目につく人は、一度得意分野に目を向けてみましょう。必ず自分にしかない特別な「能力(知能)」を発見できるはずです。

個性を活かした自己表現の練習方法

1. 子どもの強みを観察する

お子さま自身が「自分らしさ」に気づくのは容易ではありません。個性を伸ばすためには、まずお子さまの個性を親御さんが客観的な視点を持って観察し、好きなことや夢中になっていること、得意なことを見つけることが重要です。

観察のための具体的な方法

日常生活での観察

  • 朝起きてから夜寝るまでの行動パターンを記録する
  • 自由時間に何をして過ごすかを観察する
  • 友達とどのように関わっているかを見る
  • 新しい環境にどう対応するかを観察する

遊びの中での観察

  • どんなおもちゃに長時間集中するか
  • 一人遊びと集団遊び、どちらを好むか
  • 創作活動をする時の様子はどうか
  • 体を動かす遊びへの関心度はどうか

学習場面での観察

  • どんな方法で覚えるのが得意か(聞く、見る、書く、体験するなど)
  • 新しいことを学ぶ時の反応はどうか
  • 難しい問題に直面した時の対処法はどうか
  • 達成感を感じる瞬間はいつか

感情表現の観察

  • 嬉しい時の表現方法
  • 悲しい時の表現方法
  • 怒った時の表現方法
  • 困った時の表現方法

2. 体験の機会を増やす

子どもの表現力を高めるためには、五感を刺激するさまざまな体験をさせることが大切です。実際に経験しなければ表現できない感情や考えがたくさんあります。

年齢別体験活動の例

3-4歳向け

  • 粘土や絵の具を使った自由な創作活動
  • 楽器に触れる体験(タンバリン、マラカス、木琴など)
  • 簡単な料理体験(おにぎり作り、野菜洗いなど)
  • 動物との触れ合い
  • 水遊び、砂遊び

5-6歳向け

  • より複雑な工作(段ボール工作、手芸など)
  • 本格的な料理体験
  • 園芸活動(種まき、水やり、収穫)
  • スポーツ体験(サッカー、水泳、体操など)
  • 科学実験(色水作り、磁石遊びなど)
  • 演劇やごっこ遊び

体験活動のポイント

  • 結果よりもプロセスを大切にする
  • 子どもの興味に応じて深掘りする
  • 失敗を恐れずチャレンジできる環境を作る
  • 体験後に感想を聞き、言葉にする機会を作る

3. 語彙力を豊かにする

自己表現には豊富な語彙が必要です。語彙力は親や周囲の人間との日常会話を通して身につけていくほか、絵本の読み聞かせが特に効果的です。

効果的な読み聞かせの方法

絵本選びのコツ

  • 感情表現が豊かな作品を選ぶ
  • 年齢より少し難しい本にもチャレンジする
  • 様々なジャンルの本を読む(物語、図鑑、詩集など)
  • 子ども自身に選ばせる機会も作る

読み聞かせの技術

  • 登場人物によって声を変える
  • 感情を込めて読む
  • 適度なペースで読む
  • 子どもの反応を見ながら進める

読み聞かせ後の活動

  • 「どの場面が一番好きだった?」と聞く
  • 「○○はどんな気持ちだったと思う?」と感情について話し合う
  • 「もし君だったらどうする?」と想像させる
  • 感想を絵に描いてもらう

日常会話での語彙力向上

  • 「美味しい」だけでなく「甘い」「さっぱりしている」など具体的な表現を教える
  • 子どもが「楽しかった」と言ったら「どんな風に楽しかった?」と掘り下げる
  • 大人が使う語彙を意識的に豊富にする
  • 子どもの発言を言い換えて返すことで表現の幅を広げる

4. 安心できる環境を作る

自己表現力を育てるためには、子どもが安心して自分の思いを伝えられる環境が不可欠です。

物理的環境の整備

  • 子どもが集中できる静かな空間を確保する
  • 創作活動ができる場所を用意する
  • 作品を飾れるスペースを作る
  • 一人になれる空間も大切にする

心理的環境の整備

  • 子どもの話を最後まで聞く
  • 間違いを恐れない雰囲気を作る
  • 小さな表現も認めて褒める
  • 批判的な言葉は避け、建設的な提案をする
  • 親自身が自己表現を楽しむ姿を見せる

コミュニケーションの質を高める

  • 「ふーん」「あっそう」といった聞き流すような返答を避ける
  • アイコンタクトを大切にする
  • 子どもの気持ちを代弁しすぎない
  • 質問は開放的なものを心がける(「はい・いいえ」で答えられない質問)

やってはいけないNG行動

1. 親の理想を押し付ける

親が子どもに対して理想や期待を持つのは自然なことです。しかし、その理想があまりに強すぎると、子どもの自己表現を阻害してしまう危険があります。

押し付けがちな理想の例

  • 「優等生であってほしい」
  • 「人気者になってほしい」
  • 「何でも完璧にやってほしい」
  • 「親の価値観に従ってほしい」

理想の押し付けが引き起こす問題

  • 子どもが本当の自分を隠すようになる
  • 親の顔色を常に伺うようになる
  • 失敗を恐れて挑戦しなくなる
  • 自己肯定感が低下する
  • 創造性や独創性が失われる

健全な期待の持ち方

  • 子どもの個性を理解した上で期待を調整する
  • プロセスを重視し、結果にこだわりすぎない
  • 子どもの選択を尊重する
  • 失敗を学習の機会として捉える

2. 他の子と比較する

他の子どもとの比較は、子どもの自己表現に大きな悪影響を与えます。

比較することの弊害

  • 自信を失わせる
  • 競争意識が過度になる
  • 他者を意識しすぎて自分らしさを見失う
  • 劣等感を植え付ける
  • 個性的な表現を避けるようになる

比較を避けるための心構え

  • 「個性=突出して秀でていること」と思わない
  • その子なりの成長を認める
  • 短所も見方を変えれば長所になることを理解する
  • 他の子の良いところは素直に認めつつ、我が子の良さも見つける

3. 大人が代弁しすぎる

親がお子さんの生活や思考パターンを熟知しているため、「こう言えばいいのに」「それじゃあ伝わらない」と思い、ついつい口を出したくなることがあります。

代弁しすぎることの問題

  • 自己表現の機会を奪う
  • 「自分で言わなくてもいい」という依存心を生む
  • 表現力が向上しない
  • 自分で考える力が育たない

適切なサポートの方法

  • 子どもが困っている時は「どう言いたいの?」と聞く
  • 時間をかけて子どもの言葉を待つ
  • 部分的にヒントを与える程度に留める
  • 完璧でなくても子どもの表現を尊重する

4. 感情を否定する

子どもの感情表現を否定することは、自己表現力の発達に深刻な影響を与えます。

感情否定の例

  • 「そんなことで泣くんじゃない」
  • 「怒っちゃダメ」
  • 「男の子なんだから我慢しなさい」
  • 「そんな風に思うなんておかしい」

感情を受け入れる方法

  • まず子どもの感情を受け止める
  • 感情には良い悪いがないことを伝える
  • 感情の表現方法について話し合う
  • 代替案を一緒に考える

面接での実践:個性を活かした回答例

志望理由への対応

最近の傾向として、就学前の子どもに志望理由を聞く学校が増えています。これは、大人の本音を見抜くのが難しいため、子どもの素直な反応を通して家庭の方針や価値観を知ろうとする狙いがあります。

準備の心構え

  • 無理に大人びた回答を求めない
  • 子ども自身の体験に基づいた回答を大切にする
  • 暗記させるのではなく、体験を言葉にする練習をする

効果的な準備方法

学校見学の活用: 第一志望校や第二志望校であれば、お子さんに学校を見せておいたほうがいいでしょう。その際は以下のような声かけが効果的です:

  • 「この学校の図書室には、あなたの好きな本がたくさんあっていいね」
  • 「お兄さんやお姉さんがやさしいね。一緒に勉強できたらいいね」
  • 「広い校庭で思いっきり遊べそうだね」

体験の言語化: 見学の後は、印象に残ったことを子どもなりの言葉で表現する練習をしましょう:

  • 「一番楽しかったのはどこ?」
  • 「どんな気持ちになった?」
  • 「どうしてそう思ったの?」

家族に関する質問への対応

家族構成や家庭での過ごし方について聞かれることもよくあります。

お父様と何をして遊びますか? 良い例:「お父さんとは公園でキャッチボールをします。お父さんが上手に投げてくれるので、僕も上手になりました。雨の日は家でトランプをします」

この回答では、具体的な体験が述べられており、父親との良好な関係性と、天候に応じた活動の幅広さが伝わります。

避けたい例:「毎週必ず○○公園に行きます」 時期的にそぐわない特別な回答や、覚えさせた感のある不自然な回答は印象を悪くします。

学校生活に関する質問への対応

お友達と仲良くできますか?

  • 具体的なエピソードを交える
  • 困った時の対処法も含める
  • 自分なりの価値観を表現する

:「はい、できます。もし友達が悲しそうにしていたら『どうしたの?』って聞いてあげます。一緒に遊ぼうって言います」

困難な状況への対応

迷子になったらどうしますか? この質問では、日頃の安全指導と子どもの判断力が試されます。

良い回答の要素:

  • 基本的な個人情報を知っている
  • 適切な対処法を理解している
  • 冷静に状況を説明できる

:「知らない人にはついていきません。お店の人やお巡りさんに『迷子になりました』と言います。おうちは○○です」

個性を活かした回答のコツ

言語的知能が強い子

  • 豊富な語彙を使って詳しく説明する
  • ストーリー性のある回答を心がける
  • 本から学んだことを織り交ぜる

音楽的知能が強い子

  • リズムを意識した話し方
  • 歌やメロディーの話を取り入れる
  • 感情豊かな表現を活用する

身体運動的知能が強い子

  • 具体的な行動を含めた回答
  • スポーツや運動の体験を語る
  • 身振り手振りを交えた表現

対人的知能が強い子

  • 他者との関わりを重視した回答
  • 思いやりのある表現
  • チームワークの大切さを語る

長期的な視点での自己表現力育成

日常的な関わり方の重要性

面接対策は一朝一夕でできるものではありません。面接官は、子どもの本音を聞き出すために、ひとつの質問について深く掘り下げてきます。その場限りの答えを暗唱させるだけでは対応できません。

日常で意識すべきこと

質の高い会話時間を作る: 現代の家庭では、家族で過ごす時間が年々減少し、家族間でのコミュニケーションの機会も減っています。意識的に子どもとの時間を作ることが重要です。

  • 朝食や夕食時にテレビを消して会話する
  • 寝る前の10分間を子どもとの時間にする
  • 車での移動時間を活用する
  • 子どもが話したがっている時は手を止めて聞く

効果的な質問技術

  • 「今日はどうだった?」より「今日一番楽しかったことは?」
  • 「はい・いいえ」で答えられない開放的な質問をする
  • 「どうして?」「どんな風に?」で掘り下げる
  • 子どもの答えに対して更に質問を重ねる

傾聴の技術: 子どもの自己表現を促すためには、親の「聞く力」が重要です。

  • 子どもの目を見て話を聞く
  • 最後まで遮らずに聞く
  • 感情を共感的に受け止める
  • 要約して返すことで理解を示す

自己肯定感との関係

自己表現と自己肯定感は密接な関係にあります。自己表現を通じて、自分の考えや感情が他者に受け入れられることで、自信を持ちやすくなり、自己肯定感が向上します。

自己肯定感を高める関わり方

存在承認

  • 「あなたがいてくれて嬉しい」という気持ちを伝える
  • 完璧でなくても愛されていることを実感させる
  • 個性や特徴を肯定的に捉える

努力承認

  • 結果よりもプロセスを評価する
  • 小さな努力も見逃さずに認める
  • 挑戦することの価値を伝える

成長承認

  • 以前の本人と比較して成長を認める
  • できるようになったことを具体的に伝える
  • 可能性への期待を示す

感情教育の重要性

自己表現力を高めるためには、感情を理解し、適切に表現する能力を育てることが重要です。

感情語彙の拡充: 基本的な「嬉しい」「悲しい」「怒り」「怖い」から始めて、より細かな感情表現を教えていきます。

  • 嬉しい → 楽しい、満足、誇らしい、安心
  • 悲しい → 寂しい、がっかり、残念、心配
  • 怒り → イライラ、ムカムカ、腹立たしい、悔しい
  • 怖い → 不安、緊張、びっくり、戸惑い

感情の表現方法: 感情には様々な表現方法があることを教えます。

  • 言葉による表現
  • 表情による表現
  • 身振り手振りによる表現
  • 絵や音楽による表現
  • 文章による表現

感情のコントロール: 感情を適切に表現し、コントロールする方法を身につけさせます。

  • 深呼吸などのリラックス技法
  • 感情を言葉にする練習
  • 感情の理由を考える習慣
  • 他者の感情への共感

各年齢段階での具体的アプローチ

3-4歳:自己表現の基礎作り

この時期は、感情と言葉を結びつける重要な時期です。

重点項目

  • 基本的な感情語彙の習得
  • 「私は」「僕は」を使った文章表現
  • 身体を使った表現の楽しさを知る
  • 安心して表現できる環境作り

具体的活動

  • 感情カードを使った遊び
  • ごっこ遊びで様々な役割を体験
  • 粘土や絵の具での自由表現
  • 手遊び歌やリズム遊び

5-6歳:表現の幅を広げる

受験直前期にあたるこの時期は、より具体的で論理的な表現力を育てます。

重点項目

  • 理由や根拠を説明する力
  • 相手に応じた表現の使い分け
  • 自分の体験を整理して話す力
  • 他者への配慮を含めた表現

具体的活動

  • 体験談の発表練習
  • 質問ゲーム(なぜ?どうして?)
  • 協力して作品を作る活動
  • 人前で話す機会を意図的に作る

特別な配慮が必要な子への対応

内向的な子どもへの配慮

内向的な性格は決して短所ではありません。その子なりの表現方法を見つけることが重要です。

効果的なアプローチ

  • 一対一でじっくり話す時間を作る
  • 書く表現から始めてみる
  • 小さなグループでの活動から始める
  • 準備時間を十分に与える

発達に特性がある子への配慮

個々の特性を理解し、その子に合った表現方法を見つけることが大切です。

視覚優位の子

  • 絵カードや図表を活用
  • 見本を示しながら説明
  • 視覚的な記憶術を活用

聴覚優位の子

  • 音楽やリズムを取り入れる
  • 繰り返し聞かせる
  • 声の調子やトーンを工夫

体感覚優位の子

  • 実際に体験させながら学ばせる
  • 動作を交えた表現を認める
  • 触れるものを用意する

家庭でできる表現力チェックリスト

定期的にお子さんの表現力の成長を確認することで、適切なサポートができます。

基礎的表現力チェック(3-4歳)

□ 自分の名前と年齢が言える

□ 「うれしい」「かなしい」などの基本感情を表現できる

□ 「おはよう」「ありがとう」などの挨拶ができる

□ 簡単な質問に答えることができる

□ 身振り手振りで気持ちを表現することがある

発展的表現力チェック(5-6歳)

□ 体験したことを順序立てて話すことができる

□ 「なぜなら」「だから」などの理由を説明できる

□ 相手によって話し方を変えることができる

□ 困った時に助けを求めることができる

□ 自分の意見と他人の意見の違いを理解している

□ 創作活動で独自の表現をすることがある

□ 感謝や謝罪の気持ちを適切に表現できる

よくある質問とアドバイス

Q1: 人見知りが激しく、面接が心配です

人見知りも個性の一つです。無理に社交的にさせようとせず、安心できる環境で少しずつ慣れさせましょう。家庭で「もし知らない人に話しかけられたら」という練習をしたり、挨拶の練習を積み重ねることが効果的です。

Q2: 恥ずかしがりで声が小さくなってしまいます

大きな声で話すことだけが良い表現ではありません。聞き取りやすい声の大きさを家庭で練習し、内容のある発言ができることを重視しましょう。面接官も、子どもが緊張することは理解しています。

Q3: 答えを暗記させた方が良いでしょうか?

暗記に頼った回答は面接官に見抜かれやすく、想定外の質問に対応できません。それよりも、様々な体験をさせ、それを自分の言葉で表現する練習を重ねることが重要です。

Q4: 個性的すぎて心配です

個性は大切な魅力です。ただし、社会性や協調性とのバランスも重要です。個性を活かしながら、他者への配慮も学べるような活動を取り入れましょう。

まとめ

小学校受験の面接で求められる自己表現力は、単なる受験テクニックではありません。お子さんが将来にわたって豊かな人間関係を築き、自分らしく生きていくための基礎となる重要な能力です。

多重知能理論を参考にしながら、お子さん一人ひとりの個性を見つけ、それを大切に育てることで、面接だけでなく、その後の学校生活や将来の人生においても大きな財産となるはずです。

短所と思えることも視点を変えれば特性を活かした長所に変えることができます。「心配性だから慎重に計画を立てる力がある」「内向的だから深く考える力がある」「活発すぎるから行動力がある」など、お子さんの特性を肯定的に捉えることから始めましょう。

面接は確かに合否を決める重要な場面ですが、同時に親子でお子さんの成長を確認し、将来への方向性を考える貴重な機会でもあります。結果にかかわらず、お子さんが自分らしく表現できたなら、それは大きな成長の証しです。

最後に、最も重要なことは、お子さんが「自分らしくいることの素晴らしさ」を実感できることです。そのためには、まず家庭が安心して自己表現できる場所であることが必要です。親御さん自身も自己表現を楽しみ、お子さんの表現を心から喜び、受け入れる姿勢を持ち続けてください。

お子さんの未来が、自分らしさを大切にしながら、豊かな表現力を持って輝けるものとなりますように。

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参考文献

主要文献

  1. ハワード・ガードナー(著)、松村暢隆(訳)『MI:個性を生かす多重知能の理論』新曜社、2001年
  2. JAMネットワーク『親子で育てる「じぶん表現力」―毎日家庭で着実にできるトレーニングブック』小学館、2003年
  3. 有賀三夏『自分の強みを見つけよう~「8つの知能」で未来を切り開く~』ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス、2018年

学術論文・研究資料

  1. ハワード・ガードナーの多元的知能理論(MI理論)および芸術的知能概念の教育実践における意義、美術教育学研究、1997年
  2. 川越白ゆり幼稚園「自己表現と自己肯定感の関係性研究」(研究論文)

実践的教育手法

  1. 日本創造学会「多重知能理論(Theory of Multiple Intelligences:MI理論)」研究資料
  2. 子どもマナビラボ「8つの知能で自分の可能性を見つめ直す」教育実践レポート
  3. チャイルド・アイズ「小学校受験の面接対策」実践ガイド(葛西香監修)
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