
未就学児の癇癪に悩むママへ:原因から対処法まで専門家のアドバイス

毎日のように続く子どもの大泣きや癇癪(かんしゃく)に、ママはヘトヘトになってしまいますよね。幼児の癇癪は決して育て方が悪いわけではなく、子どもの発達過程で誰もが通る道です。本記事では、0〜6歳の未就学児が感情をコントロールできず癇癪を起こす理由と、専門家がおすすめする具体的な対処法について解説します。子どもの脳の発達メカニズムから、家庭でできる感情コントロールのトレーニング方法、さらに必要に応じた第三者のサポート活用まで、幅広くカバーしています。つらい毎日を乗り越えるヒントを一緒に見つけていきましょう。
目次
癇癪が起こるメカニズムと子どもの脳発達特性
幼児が癇癪を起こしやすい背景には、脳の前頭葉(前頭前野)機能の未発達があります。前頭葉は感情や衝動を抑制する働きを担いますが、子どもはまだこの部分の発達が未熟なため、自分の感情をうまくコントロールできません。
特に2歳前後の幼児は欲求も強くなってくる一方で、“我慢する”“順番を待つ”といった判断・抑制ができず、要求が通らないと爆発的に感情を噴出させてしまうのです。これは脳の成長における正常な現象で、前頭前野が未発達な時期に自我(欲求)が芽生えることで起こる衝突といえます。
また、癇癪は子どもにとって言葉以外で気持ちを伝える手段でもあります。幼い子どもは自分の欲求不満や不安・怒りを言葉で表現するスキルが十分ではありません。そのため、内側に抱えた大きな感情が制御できずに泣き叫ぶ形で表に出てしまいます。決して子どもが意地悪をしようとしているのではなく、「怖い」「嫌だ」「もっと〜したい」といった気持ちをどう表現してよいかわからないために起こるサインなのだと理解しましょう。
参考:イヤイヤ期はいつから?イヤイヤ期の対処法や接し方を解説
これを知れば、わが子の感情に振り回されなくなる…児童精神科医が解説「子どもが癇癪を起こす本当の理由」
幼児期に癇癪が起きやすい理由とその正常範囲

幼児期(特に1〜3歳頃)は癇癪が起きやすいことで知られ、「イヤイヤ期」などと呼ばれます。これは前述したように脳の抑制機能が未熟であることや、自己主張が芽生える反面コミュニケーション能力が未発達なことが主な理由です。例えば2〜3歳児は自分でやりたい気持ちが強い一方、思い通りにいかないともどかしさを感じて怒りに繋がることがあります。
また、「わかってほしいのにわかってもらえない」といったフラストレーションから癇癪という形で訴えることもよくあります。
癇癪の頻度や程度には個人差がありますが、幼児期にある程度の癇癪が起こるのは正常な範囲です。研究によれば、癇癪は生後1歳頃から出現し始め、2〜3歳でピークを迎え、その後4〜5歳までに次第に減少していくのが一般的ですe-cep.org。
世界の報告では幼児の30〜90%に何らかの癇癪行動が見られるともされ、多くの子どもが通る道だと言えます。頻度については、約75%の子どもは週に3回未満の癇癪しか起こしません。
毎日激しい癇癪を起こすケースは10%以下とされ、毎日何度も手が付けられない癇癪が続く場合は少し注意が必要かもしれません。ただし、「週に数回泣き叫ぶ」「一日に一度短い癇癪がある」程度であれば幼児期には十分起こり得る範囲内です。典型的な癇癪の長さも数分程度で、平均すると2歳児で約2分、4歳でも4分程度と言われています。
一方で15分以上泣き続けたり、1日に何度も爆発するようなら少し様子を観察しましょう。このように年齢が上がるにつれて癇癪は減っていくのが普通なので、就学前後には落ち着いてくる子がほとんどです。
参考:Characteristics of temper tantrums in 1–6-year-old children and impact on caregivers
癇癪を起こしたときの具体的な対応法
お子さんがまさに癇癪の真っ最中で手がつけられないとき、親としてどう対処すれば良いのでしょうか。専門家のアドバイスに基づく基本的な対応ステップは次の通りです。
- 安全を確保する: まずは子どもや周囲の安全が第一です。癇癪中は興奮して物を投げたり叩いたりすることがありますので、周囲の硬い物・危険物を片付けましょう。必要であれば子どもを優しく押さえてケガを防ぐ物理的サポートも検討します(強く押さえつけすぎないよう注意)。場所が店内など危険がある場合は、一旦子どもを人混みや危ない場所から抱きかかえて離し、安全にクールダウンできる場所へ移動させます。
- 落ち着くのを待つ: 安全を確保したら、子どもが感情を発散しきるまで静かに見守りましょう。専門家によれば、子どもがヒートアップしている最中は下手に声をかけない方が良いとされています。理屈でなだめようとして「いい加減にしなさい!」「泣かないの!」などと言っても、子どもはパニック状態のため耳に入らず、かえって興奮を強めてしまいがちです。親も深呼吸して落ち着き、できるだけ穏やかな表情と言葉遣いで見守ることを意識しましょう。子どもの気持ちがピークを過ぎてトーンが下がってきたタイミングが合図です。その頃合いを見計らって、必要であればそっと身体に触れて安心させたり、「大丈夫だよ」と優しく声をかけたりしてみましょう。
参考:こだわりが強くかんしゃくが抑えられない、いい声かけは? - 落ち着いたら受容と称賛: 子どもが泣きやんで完全に冷静さを取り戻したら、その場ですかさず気持ちが落ち着いたことを褒めてあげましょう。「自分で落ち着けたね、えらいね」「ちゃんと待てたね」など、どの点が良かったか具体的に伝えます。その場ですぐに褒めることで、子どもは「癇癪をおさめてくれたこと」が認められ安心感を得られますし、自分で気分を落ち着ける方法を学ぶきっかけにもなります。時間が経ってからでは子どもも癇癪→落ち着いた流れを忘れてしまうため、落ち着いた直後に声をかけるのがポイントです。
参考:子どもの癇癪(かんしゃく)とは?癇癪の原因や発達障害との関連は?癇癪を起こす前の対策と対処法、相談先まとめ【専門家監修】 - 要求への対応: 癇癪を起こしたきっかけ(おもちゃが欲しい、帰りたくない等)に対する親の対応も重要です。癇癪に根負けして子どもの要求をそのまま叶えてしまうと、「泣けば言うことを聞いてもらえる」と子どもが学習し、今後も同じ手段で訴えるようになる恐れがあります。逆に感情的に怒鳴りつけて抑え込もうとすると、子どもはますます不快感を募らせ次の癇癪が激化しかねません。理想的には、子どもが落ち着いた後に改めて要求や気持ちを聞き、「〜が嫌だったんだね」「〜したかったんだね」と気持ちを受け止めつつ代替案を提案することです。例えば「おもちゃは買ってあげられないけど、おうちにあるブロックで遊ぼうか」など子どもの欲求そのものは叶えられなくても気持ちに寄り添った声かけを心がけましょう。子ども本人が自分の感情と言葉をまだうまく繋げられない分、親が代弁してあげることで「自分の気持ちをわかってもらえた」という安心につながり、次第に落ち着きを取り戻しやすくなります。
以上が基本的な対応の流れです。外出先で周囲の目が気になる場面では難しいこともありますが、「今この子は気持ちの整理がつかなくて泣いているんだ」と捉え、深呼吸して付き合ってあげてください。こうした対応を積み重ねることで、親子双方が少しずつ癇癪に振り回されないコツを掴めるようになります。
感情コントロール力を育む家庭でのトレーニングと遊び

日頃から家庭で子どもの感情コントロール力(セルフコントロール力)を育む遊びやトレーニングを取り入れることで、癇癪の予防や軽減につなげることができます。ポイントは、子どもが楽しみながら自然と自己コントロールを学べる機会を作ることです。
●遊びを通じた自己コントロール訓練: 専門家によれば、遊びの中でルールや順番を守ったり、動きをコントロールしたりする経験がセルフコントロール力向上に効果的です。例えば次のようなゲームは親子で楽しみながら衝動抑制や注意力を鍛えるのに役立ちます。
- ストップ&ゴーゲーム: 音楽に合わせて踊り、「ストップ」の合図でピタッと止まる遊びです。いわゆる「だるまさんが転んだ」や赤信号・青信号ゲームでもOKです。動きたい気持ちをぐっと我慢して止まる練習になります。
- サイモン・セズ(Simon Says): 大人の指示に従って動作するゲームですが、「Simon says~(サイモンが〇〇してと言った)」と言われたときだけ従い、言われなかった場合は動かないというルールです。聞く力と判断力を養えます。
- じゃんけんパターンゲーム: 最初は普通にじゃんけんをし、勝ったら次はグー、負けたら次はチョキ、のように手を出すパターンを変えていく遊びです。ルールの切り替えに対応する練習になります。
- 積み木ゲーム・手作りパズル: 一緒に積み木やパズルをしながら、「次はママの番だね」「ここはこうするといいかもね」など声をかけ、順番を守る・人の話を聞く練習につなげます。
このように子どもの興味を引く遊びの中で、「待つ・考える・我慢する」といった要素を取り入れることで、楽しく自己規制能力を伸ばすことができます。親子で一緒に取り組む時間を作り、無理のない範囲で続けてみましょう。
参考:家で簡単にできる!子供のセルフコントロール力を伸ばす遊び5選
●気持ちを落ち着かせる練習: 癇癪を完全になくすことは難しくても、子ども自身が怒りや悲しみの感情を感じたときにクールダウンする方法を教えておくことも大切です。
例えば「6秒ルール」をご存じでしょうか。怒りの感情は永遠にエスカレートし続けるのではなく、6秒ほど経つとピークアウトして下がり始めるとも言われます。そこで、子どもがカッとなったらすぐ何かせずまず6秒数えることを教えます。普段から一緒に「1…2…3…」と6までゆっくり数える練習をしておき、「怒ったらまず6つ数えようね」と伝えておくと良いでしょう。合わせて深呼吸もシンプルながら効果的なクールダウン法です。風船を膨らます真似をして大きく息を吸ったり、ろうそくを吹き消すゲームでフーッと息を吐いたりすると、遊び感覚で呼吸法を身につけられます。「6つ数える間フーッてしようね」と数を数えながら深呼吸する練習も良いでしょう。
参考:ほっとひと息、こころにビタミン vol.23
●感情表現の練習: 日頃から子どもの気持ちを言葉にする手助けをすることで、癇癪以外の表現手段を増やしてあげられます。例えば、子どもが不機嫌になったとき「〇〇が嫌だったんだね」「〜したかったんだね」と気持ちを代弁してあげる習慣をつけましょう。そうすることで子どもは少しずつ「悲しい」「悔しい」など感情と言葉を結びつけて学んでいきます。絵本の読み聞かせを通じて「この子は怒ってるね、どうしたかったのかな?」と尋ねてみるのも効果的です。感情カードや顔のイラストを見せ「今どんな気持ちに近い?」と遊びながら聞いてみるのもよいでしょう。こうした働きかけによって、子ども自身が自分の感情に気づき言語化する力が育まれると、徐々に癇癪以外の手段で気持ちを伝えられるようになっていきます。
家庭での小さな積み重ねが、子どもの非認知能力(気持ちのコントロールや共感力など)の発達を助け、結果的に癇癪の頻度や激しさを減らしていくことにつながります。ぜひ楽しみながら取り組んでみてください。
癇癪が頻繁で生活に支障がある場合に考えられる発達障害のサイン

上述のように幼児期の癇癪自体は多くの場合「成長の一過程」ですが、あまりにも頻繁だったり激しかったりして日常生活に支障をきたす場合、背景に発達上の特性(発達障害など)が関係している可能性も考えられます。発達障害のある子どもは、しばしば感情のコントロールが苦手な傾向を示すことが知られています。これは脳の前頭前野の機能に生じる特性上の偏りによるもので、決して本人の努力不足や親のしつけの問題ではありません。では具体的に、どのようなサインに注意すれば良いでしょうか。
- 年齢相応の発達との差異:
癇癪のピークは3歳前後で、4〜5歳頃には回数も減っていくのが通常です。それにも関わらず5歳以降になっても毎日のように激しい癇癪が続く場合は発達特性を疑ってみても良いかもしれません。特に、小学校に上がってからもかんしゃく持ちで集団生活に著しい困難がある場合は専門家に相談してみましょう。 - 特定のこだわりや感覚過敏による癇癪:
発達障害のうち自閉スペクトラム症(ASD)の特性として、強いこだわりや感覚の過敏さがあります。例えば決まった手順が乱れることに対して極端に不安・不快を示し、癇癪につながるケースです。
おもちゃの並べ方に強いこだわりがあり崩されるとパニックになる、人混みや大きな音に耐えられず泣き叫ぶ、といった様子が見られるときはASDのサインかもしれません。
- 言葉の遅れ・コミュニケーションの困難:
言葉の発達がゆっくりな子や、自分の気持ちを言語で伝えることが苦手な子は、伝えられないもどかしさから癇癪という形で感情を爆発させがちです。これは聴覚や言語の発達障害の場合もありますし、ASD児にも見られる傾向です。「言いたいことがあるのに言えずに泣く」「かん高い奇声を上げる」という場合、言語面のサポートが必要かもしれません。 - 衝動性の強さ・注意力の問題:
注意欠陥・多動性障害(ADHD)の特性として、衝動的に行動してしまいがちな点が挙げられます。待つことが極端に苦手ですぐ「やりたい!」と動いてしまい、周囲に止められるとかえってパニックになる、といったことがありますj。片付けや切り替えが苦手で、親が促すと「イヤだ!」と大爆発する場合、ADHD傾向の可能性も考えられます。
実際、発達障害の中でもASDとADHDの子どもは怒りのコントロールが特に難しく、癇癪を起こしやすい傾向があるとされています。
以上のような特徴に心当たりがある場合、専門家による評価や早期支援を検討してみましょう。発達障害が背景にある癇癪の場合、適切な対応法や環境調整によって子どもの負担を大きく減らせる可能性があります。例えば感覚過敏の子には刺激を減らす工夫をしたり、衝動性の強い子には見通し(タイマーや予定表)を立ててあげたりといった対策が有効です。また、公的機関や発達支援の専門家に相談することで、家庭では気づけない対応のヒントを得られることもあります。
家庭だけで難しい場合に利用できる第三者の支援(学習塾など)
「毎日の癇癪にもう限界…」というとき、家庭以外の第三者の力を借りることも検討しましょう。恥ずかしいことではありませんし、プロの手を借りることで親子ともにグッと楽になるケースも多いのです。
●専門機関への相談: まず、公的な相談窓口の利用もおすすめです。各自治体の児童相談所や子ども家庭支援センターでは、18歳未満の子どもに関する育児相談を受け付けており、癇癪の悩みについても専門スタッフがアドバイスや継続支援を行っています。また、発達障害の疑いがある場合は発達障害者支援センターや小児精神科などで専門的な評価とサポートを受けることもできます。このような公的サービスは基本無料で利用できますので、「もしかして…」と感じたら早めに相談してみると安心です。
●民間の育児教室・学習塾の活用: 最近では、発達が気になる子や癇癪の多い子向けに専門的プログラムを提供する幼児教室や学習塾も増えています。そうした教室では、心理士や指導員が在籍し、遊びや学習の中で社会性や感情コントロールを伸ばすトレーニングをしてくれます。家庭では難しい集団生活の練習や、客観的な視点でのアドバイスが得られるのが利点です。
第三者の専門家が関わることで子どもに合った対処法やトレーニングが提供され、劇的に状況が改善するケースもあります。
●無料体験や相談を利用してみよう: いきなり教室に通わせるのはハードルが高い…という場合でも、まずは気軽に無料体験授業や相談会に参加してみるのがおすすめです。AiQ(アイキュー)では無料体験授業も実施中です。
実際にプロと話してみるだけでも、「こういう対応でいいんだ」「専門家に頼っていいんだ」と心が軽くなるものです。子どもにとっても新しい環境で刺激を受けたり、「自分以外の大人」に話を聞いてもらうことで変化が生まれることがあります。第三者に頼ることは決して甘えではなく、親子の笑顔を取り戻す近道になるかもしれません。
まとめ:ママの笑顔も忘れずに
幼児の癇癪は誰にでも起こり得るものであり、成長につれて少しずつ収まっていく一時的なものです。とはいえ、毎日の子育ての中で癇癪に付き合うのは本当に大変で、ママが疲弊してしまうこともあります。そんなときはぜひここで紹介した専門家のアドバイスを思い出し、完璧を目指しすぎず取り入れられるところから試してみてください。
深呼吸や6秒ルール、遊びの中でのトレーニング、そして周囲のサポート──これらを上手に活用しながら、お子さんの感情コントロール力は少しずつ育っていきます。何より大切なのは、ママ自身が笑顔で余裕を持つこと。難しい日は無理せず第三者に頼り、リフレッシュしながら、「うちの子だけじゃないんだ、大丈夫」と自分に言い聞かせてください。専門家の知恵と周囲の力を借りつつ、親子で笑顔の時間を増やしていきましょう。きっと、癇癪が収まった後の成長したお子さんの姿に驚く日が来ますよ。お疲れさまの毎日ですが、ママも一人で抱え込まず、必要なときはいつでも手を伸ばしてみてくださいね。
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