【発達障害・グレーゾーン】字を書くことが苦手な子どもを理解する ― 無理に書かせない支援の大切さと家庭でできる実践法

「うちの子、どうしてこんなに字を書くのを嫌がるのだろう」 「一生懸命やっているのに、なかなか上達しないのはなぜ?」 「他の子と比べて、明らかに字が汚い気がする……」
発達障害やグレーゾーンのお子さまを育てる保護者の方から、書字に関するお悩みはとても多く寄せられます。幼稚園や保育園で、ひらがなを練習し始めたころから、周囲との違いに気づき、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
字を書くことが苦手なのは、決してお子さま本人の努力不足や怠けではありません。
この記事では、お子さまが字を書くことに困難を感じている理由を科学的な視点から解説し、ご家庭でできる具体的な支援方法をお伝えします。未就学児の保護者の方を中心に、字を書く準備段階から、実際の書字支援まで、段階を追って詳しくご説明いたします。
目次
1. なぜ字を書くことが苦手なのか? ― 科学的な理解
「字を書く」という行為は、一見シンプルに思えるかもしれません。しかし実際には、非常に複雑な脳と身体の協調が必要な活動です。
字を書くために必要な能力
字を書くためには、以下のような複数の能力が同時に機能する必要があります。
微細運動(手指の細かい動き)
鉛筆を正しく持ち、適切な力加減で紙の上を動かす能力です。この能力は、体の中心から末端に向かって発達していきます。肩→肘→手首→指先という順序で、だんだんと細かい動きができるようになるのです。
視知覚(見る力)
文字の形を正確に捉え、線の向きや長さ、位置関係を把握する能力です。視力とは異なり、目で見た情報を脳で正しく処理する力を指します。
目と手の協応
見ている対象と手の動きを連動させる能力です。黒板の字を見ながらノートに書く、お手本を見ながら真似て書くといった活動には、この能力が不可欠です。
空間認知
文字の大きさや配置、マスの中のどこに書くかを判断する能力です。「へ」と「く」の違いや、漢字の部首の位置関係なども、空間認知の働きによって理解されます。
姿勢保持・体幹の安定
椅子に座って机に向かい、安定した姿勢を保つ能力です。体幹が弱いと、姿勢が崩れやすく、手指を細かく動かすことに集中できなくなります。
集中力・持続力
一つの作業に注意を向け続ける能力です。書字は時間がかかる作業であるため、一定時間の集中力が必要になります。
発達の「凸凹」が書字困難を引き起こす
発達障害やグレーゾーンのお子さまは、これらの能力の一部に発達の凸凹(でこぼこ)があることが多いとされています。たとえば、知的能力は高いのに、手指の細かい動きが苦手であったり、目で見た情報の処理に時間がかかったりするのです。
重要なのは、これらの能力は「練習」だけで伸びるものではないということです。脳や身体の発達の特性が関係しているため、ただ繰り返し書かせるだけでは、根本的な改善につながりにくいのです。
2. 発達性協調運動症(DCD)と書字の関係
発達性協調運動症(DCD)とは
発達性協調運動症(Developmental Coordination Disorder:DCD)は、神経疾患や知的障害がないにもかかわらず、協調された運動の習得や使用に困難がある状態を指します。
日本語では「不器用」という言葉で表現されることが多いですが、医学的には神経発達症の一つとして位置づけられています。
DCDの発生率は5〜8%とされており、ADHDやASDよりも高い頻度で見られます。にもかかわらず、医療や教育の現場での認知度はまだ低く、「不器用なだけ」「練習が足りない」と見過ごされてしまうケースが少なくありません。
DCDと書字困難の関係
厚生労働省の「DCD支援マニュアル」によると、DCDのあるお子さまには以下のような書字に関する困難が見られます。
- 文字が乱雑になりやすい
- 視写(見て写すこと)が難しい
- 書くこと自体に大きな負担を感じる
- マスや行からはみ出してしまう
- 筆圧のコントロールが難しい(強すぎる・弱すぎる)
- 書くスピードが極端に遅い
学術研究においても、DCDのある子どもに対して感覚統合療法による介入を行った結果、書字困難の改善が認められたという報告があります。
併存しやすい発達障害
DCDは、他の神経発達症と併存することが多いという特徴があります。
- ASD(自閉スペクトラム症)との併存:研究によると、境界レベルを含めると89%に協調運動の問題があるとされています
- ADHD(注意欠如・多動症)との併存:約55%に協調運動の問題が見られます
つまり、発達障害の診断を受けているお子さまの多くが、書字を含む協調運動に何らかの困難を抱えている可能性があるのです。
早期発見と早期支援の重要性
DCDは3〜5歳ごろに気づかれることが多いとされています。乳幼児期には以下のようなサインが見られることがあります。
- ハイハイや歩行の開始が遅い
- よく転ぶ
- 物を落としやすい
- スプーンやフォークの使い方がぎこちない
- 着替えやボタンかけが苦手
これらのサインが見られ、5歳を過ぎても運動の苦手さが続く場合は、専門機関への相談を検討することをお勧めします。早期に適切な支援を開始することで、書字を含む様々な困難を軽減できる可能性があります。
3. 書字に必要な「見る力」― ビジョンと書字の深い関係

「見る力」は視力だけではない
「うちの子は視力検査で問題がなかったから、見る力は大丈夫」と思われている保護者の方も多いかもしれません。しかし、書字に必要な「見る力」は、視力(どれだけ遠くまで見えるか)とは異なる概念です。
見る力(視覚機能)は、大きく3つの段階で構成されています。
第1段階:入力(眼球運動)
目を動かして、見たいものにピントを合わせる段階です。滑らかに目を動かしたり、ある点から別の点に素早く視線をジャンプさせたりする能力が含まれます。
第2段階:情報処理(視知覚認知)
目から入ってきた情報を、脳で正しく処理する段階です。形を認識する、位置関係を把握する、部分と全体の関係を理解するなどの能力が含まれます。
第3段階:出力(目と手の協応)
見た情報をもとに、手を動かして行動する段階です。お手本を見ながら字を書く、飛んでくるボールをキャッチするなどの活動に必要です。
書字困難と見る力の関係
学習障害(LD/SLD)のあるお子さまが感じる困りごとには、「見る力」の弱さが関係していることがあります。
- 文字を書くのに時間がかかる
- 文字がマスからはみ出す
- ひらがな、カタカナ、漢字がなかなか覚えられない
- 鏡文字を書いてしまう
- 似たような形の文字を間違える
見る力の弱さが書字の困難に影響している場合、ひたすら書き取りの練習を繰り返しても効果が出にくいことがあります。なぜなら、見る力という「土台」が十分に育っていないからです。
ビジョントレーニングという選択肢
近年、「見る力」を鍛えるビジョントレーニングが注目されています。このトレーニングは、目で見たものの状態を捉える力を高め、見たものを正しく認識し、自分の身体をイメージ通りに動かす機能を向上させることを目的としています。
ビジョントレーニングによって期待できる効果には、以下のようなものがあります。
- 素早く目を動かし、見たいものにピントを合わせられるようになる
- 見たものの形を正確に認識し、記憶できるようになる
- 目で見た情報と身体の動きを連動させられるようになる
ただし、注意点もあります。 ビジョントレーニングは万能ではありません。書字困難の原因は視覚機能だけでなく、運動面や認知面など複数の要因が絡み合っています。ビジョントレーニングだけに頼るのではなく、子どもの特性に合わせた総合的な支援が大切です。
4. 感覚統合の視点から見る書字の困難さ
感覚統合とは何か
感覚統合とは、さまざまな感覚器官から入ってくる情報を、脳が整理・統合する機能のことです。この機能は、交通整理をする警察官のようなものだと例えられます。
私たちは普段、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚という五感に加え、以下の2つの感覚を無意識に使っています。
固有受容覚(固有感覚)
筋肉や関節の状態を感じる感覚です。「今、自分の手がどこにあるか」「どのくらいの力で物を握っているか」を把握するのに必要です。
前庭覚(前庭感覚)
身体の傾きやスピード、回転を感じる感覚です。バランスを取ったり、姿勢を保ったりするのに重要です。
感覚統合と書字の関係
字を書くという活動には、複数の感覚を統合する能力が必要です。
- 目で文字を見る(視覚)
- 鉛筆の感触を感じる(触覚)
- 手指の位置や力加減を調整する(固有受容覚)
- 姿勢を保つ(前庭覚)
感覚統合がうまくいかないと、以下のような困難が生じることがあります。
- 筆圧のコントロールが難しい(強すぎて紙が破れる、弱すぎて読めない)
- 姿勢が崩れやすく、集中が続かない
- 鉛筆を持つ手に余計な力が入る
- 文字の大きさや配置がバラバラになる
感覚統合療法による書字支援
感覚統合療法は、アメリカの作業療法士エアーズ(Ayres, A.J.)がまとめたもので、発達障害のある子どもへのリハビリテーションの一つとして用いられています。
この療法の特徴は、楽しい遊びを通して感覚の統合を促すという点です。机上の訓練として字を書かせるのではなく、トランポリンで跳ぶ、ハンモックに揺られる、粘土をこねるといった活動を通して、感覚の土台を育てていきます。
日本感覚統合学会に所属する研究者らの報告によると、感覚統合療法による介入を行ったDCDのある子ども13例中9例において、書字困難に関する改善が認められたとされています。
感覚統合療法を行う専門家(認定セラピスト)の数はまだ少ないですが、療育センターや小児科などで相談できる場合があります。
5. 無理な練習がもたらす深刻な影響
「書けるようになるまで練習させる」の危険性
「練習すれば必ず上達するはず」「きれいに書き直しなさい」
こうした関わりは、一見すると当たり前のことのように思えます。しかし、発達の特性があるお子さまにとっては、逆効果になることがあります。
なぜ無理な練習が逆効果になるのか
書字の困難には、脳や身体の発達特性が関係しています。これは、本人の努力だけでは変えられない部分です。
たとえるなら、視力の弱い人に「もっと頑張って遠くを見なさい」と言っているようなものです。眼鏡という適切な支援があれば見えるようになるのに、努力だけを求めても改善しません。
無理な練習がもたらす二次的な困りごと
無理な練習を続けると、以下のような二次的な困りごとにつながることがあります。
書くこと自体が嫌いになる
書くたびに「下手」「汚い」と言われる経験が重なると、書くこと自体に強い抵抗感を持つようになります。本来なら楽しいはずのお絵描きやお手紙も、避けるようになることがあります。
失敗への不安が強くなる
「また上手く書けないかもしれない」という不安が、常につきまとうようになります。これは書字だけでなく、新しいことに挑戦する意欲全般に影響を及ぼす可能性があります。
自己肯定感が下がる
「頑張っているのにできない」という経験が重なると、「自分はダメな子だ」という認識が形成されてしまいます。厚生労働省のDCD支援マニュアルでも、「どうせやっても」「僕なんか」といった諦めや投げやりな発言が出ている場合は、本人の困り感が強いサインであると指摘されています。
学習全般への意欲低下
書くことへの苦手意識が、学習全般への意欲低下につながることがあります。国語だけでなく、すべての教科で「書く」場面があるため、学校生活全体が苦痛になってしまう可能性があります。
大切なのは「結果」より「プロセス」
大切なのは、きれいな字が書けることではなく、お子さまが安心して取り組めるかどうかです。
100点満点を目指すのではなく、「今日はここまでできた」「昨日より落ち着いて取り組めた」という小さな成長を認めていくことが、長期的な成長につながります。
6. 家庭でできる支援【準備段階編】
書く前に「土台」を育てる
字を書く練習を始める前に、その土台となる力を育てることが大切です。この段階を飛ばして書字練習だけを行っても、効果は限られてしまいます。
指先を使う遊び(微細運動の発達を促す)
微細運動は、手先を使って細かい作業に取り組む経験が増えるほど発達していきます。ただし、大人が無理やり遊びを強要するのではなく、お子さまが楽しんで取り組めることが大切です。
おすすめの遊び
- 粘土遊び:こねる、丸める、伸ばすといった動作が指先の力を育てます
- 折り紙:紙を折る、角を合わせるといった動作が手指の協調性を高めます
- ひも通し:ビーズにひもを通す活動は、目と手の協応を育てます
- シール貼り・シール剥がし:指先でつまむ動作を繰り返します
- 洗濯ばさみ遊び:開く・閉じるという動作が指の力を鍛えます
- お箸を使った豆つかみゲーム:遊び感覚で箸の練習ができます
全身を使う遊び(体幹・姿勢保持の発達を促す)
安定した姿勢で机に向かうためには、体幹の力が必要です。
おすすめの活動
- 公園遊び:ブランコ、滑り台、ジャングルジムなど
- トランポリン:跳ぶ動作が体幹を鍛えます
- バランスボール:座るだけでも体幹トレーニングになります
- 雑巾がけ:四つ這いの姿勢が体幹を強化します
- 動物歩き:クマ歩き、アヒル歩きなど
お絵描き・なぞり書き(書く前段階)
いきなり文字を書かせるのではなく、線を引く・形を描くところから始めましょう。
段階的なアプローチ
- 自由にお絵描き(なぐり描き)
- まっすぐな線を引く
- 曲線を引く
- 丸、三角、四角を描く
- 大きな文字をなぞる
- 小さな文字をなぞる
- お手本を見ながら書く
このように、段階を追って少しずつ難易度を上げていくことが大切です。
7. 家庭でできる支援【道具・環境編】
書きやすい道具を選ぶ
お子さまに合った道具を選ぶことで、書字のハードルを大きく下げることができます。
鉛筆の選び方
- 太めの鉛筆:握りやすく、力が入れやすい
- 三角鉛筆:正しい持ち方を自然に身につけやすい
- 持ち方補助グリップ:指の位置をガイドしてくれる
- 芯の柔らかい鉛筆(2Bなど):軽い力でも書ける
消しゴムの選び方
消しゴムで消す作業も、お子さまにとっては難しいことがあります。
- 大きめで握りやすいもの
- よく消えるもの(何度もこすらなくてよい)
- 滑りにくいもの
ノート・用紙の選び方
- マスが大きいノート:十字リーダー入りがおすすめ
- 罫線の太いノート:枠が見やすい
- 補助線入りのノート:文字の中心や大きさを意識しやすい
下敷きの選び方
- 滑りにくい下敷き:紙がずれにくい
- ソフト下敷き:適度なクッション性で書きやすい
書きやすい環境を整える
机と椅子の高さ
足が床にしっかりついて、肘が机の高さにくるように調整します。姿勢が安定することで、手指の動きに集中できます。
照明
手元が影にならないよう、照明の位置を確認します。
騒音・視覚的な刺激
テレビを消す、おもちゃが視界に入らないようにするなど、集中できる環境を整えます。
「書かない」選択肢も用意する
すべてを書かせる必要はありません。以下のような代替手段を取り入れることで、書くことへの負担を軽減できます。
- 〇をつける:選択肢から選ぶ形式
- 線で結ぶ:書く量を減らす
- シールを貼る:正解にシールを貼る
- 指で示す:口頭で答える
8. 家庭でできる支援【声かけ・心理面編】
結果ではなくプロセスを認める声かけ
お子さまの自己肯定感を育てるために、結果(きれいに書けたかどうか)ではなく、プロセス(取り組んだこと自体)を認める声かけを心がけましょう。
おすすめの声かけ例
- 「最後まで座っていられたね」
- 「昨日よりも落ち着いて取り組めたね」
- 「難しいところも諦めずに挑戦したね」
- 「ここの線、丁寧に書こうとしたのがわかるよ」
- 「自分で直そうとしたんだね、えらいね」
避けたい声かけ例
- 「なんでこんなに汚いの?」
- 「もっときれいに書きなさい」
- 「○○ちゃんはもっと上手に書けるのに」
- 「何度も練習しているのに、まだできないの?」
「今日はここまで」を決める
「最後までやりきる」ことよりも、「無理のない量で終わる」ことを優先しましょう。疲れてきたら、たとえ途中でも切り上げることが大切です。
具体的な目安
- 未就学児:5〜10分程度
- 小学校低学年:10〜15分程度
集中が切れてきたサイン(姿勢が崩れる、そわそわする、あくびが増えるなど)に気づいたら、無理に続けずに休憩を入れましょう。
できたことを可視化する
小さな成長も見える形で残すことで、お子さまの自信につながります。
- カレンダーにシールを貼る
- ポートフォリオ(作品集)を作る
- 写真に撮って見比べられるようにする
親御さん自身の心のケアも大切
お子さまの書字の困難に向き合うことは、親御さんにとっても大きなストレスになることがあります。「もっとサポートしなければ」「私の育て方が悪いのでは」と自分を責めてしまうこともあるかもしれません。
しかし、発達の特性は育て方で生じるものではありません。お子さまの特性を理解し、適切に支援しようとしているあなたは、すでに素晴らしい親御さんです。
一人で抱え込まず、同じ悩みを持つ保護者同士のコミュニティや、専門家への相談を活用することをお勧めします。
9. 専門家への相談が必要なサイン
こんなサインがあれば相談を
以下のようなサインが見られる場合は、専門家への相談を検討することをお勧めします。
書字に関するサイン
- 5歳を過ぎても、丸や線をお手本通りに描くことが難しい
- 鉛筆の持ち方が極端にぎこちない
- 書くことを極端に嫌がり、泣いたりパニックになったりする
- 書くスピードが同年齢の子どもと比べて極端に遅い
日常生活に関するサイン
- 着替え(ボタン、ファスナー)が同年齢の子どもより難しい
- スプーンや箸の使い方がぎこちない
- よく転ぶ、物を落とす
- はさみやのりの使い方が苦手
心理面に関するサイン
- 「どうせできない」「僕なんか」といった否定的な発言が増えた
- 書くことだけでなく、学習全般への意欲が低下している
- 以前は楽しんでいた活動を避けるようになった
相談できる場所
医療機関
- 小児科
- 児童精神科
- 発達外来
- リハビリテーション科(作業療法士による評価・支援)
行政の窓口
- 市区町村の発達相談窓口
- 保健センター
- 教育支援センター
専門機関
- 児童発達支援事業所
- 療育センター
- 発達障害者支援センター
相談することは、お子さまにレッテルを貼ることではありません。お子さまの特性を正しく理解し、適切な支援につなげるための第一歩です。
10. よくある質問(Q&A)
Q1:何歳までに字が書けるようになる必要がありますか?
A1: 焦る必要はありません。就学前にひらがなが完璧に書けなければならないということはありません。小学校に入ってから本格的に学ぶカリキュラムになっています。
ただし、鉛筆を持つ、線を引く、丸を描くといった「書くための土台」は、遊びを通して育てておくとよいでしょう。文字そのものよりも、手指の発達や目と手の協応を育てることを優先してください。
Q2:病院で診断を受けた方がいいですか?
A2: 診断を受けるかどうかは、ご家庭の判断によります。診断を受けることで、お子さまの特性を客観的に理解でき、適切な支援につなげやすくなるというメリットがあります。
一方で、診断を受けなくても、お子さまの困りごとに合わせた支援を行うことは可能です。まずは、市区町村の発達相談窓口で相談してみることをお勧めします。専門家のアドバイスを受けながら、診断の必要性を検討することができます。
Q3:タブレットやパソコンを使わせてもいいですか?
A3: 書字の代替手段として、タブレットやパソコンを活用することは有効な選択肢です。特に、書くことに強い抵抗感があるお子さまの場合、まずは「表現すること」「伝えること」の楽しさを知ってもらうことが大切です。
ただし、手書きには脳の発達を促す効果もあるとされています。タブレット一辺倒にするのではなく、手書きとデジタルをバランスよく取り入れることをお勧めします。
Q4:学校でどのような配慮をお願いできますか?
A4: 合理的配慮として、以下のような配慮を学校にお願いできる場合があります。
- 板書の量を減らす、または写真撮影を許可する
- ノートの代わりにプリントを用意する
- テストの解答を口頭やマークシートで行う
- 提出物の字の丁寧さを評価対象から外す
- マスの大きなノートや補助具の使用を認める
配慮を受けるためには、専門家による意見書や検査結果が必要になることがあります。まずは担任の先生や特別支援コーディネーターに相談してみてください。
Q5:市販のドリルで練習させてもいいですか?
A5: ドリルを使う場合は、以下の点に注意してください。
- お子さまの発達段階に合ったものを選ぶ(難しすぎないもの)
- 量よりも質を重視する(1日数文字でOK)
- 無理強いしない
- できたところを褒める
ただし、ドリルでの反復練習が効果的かどうかは、お子さまの困難の原因によって異なります。手指の発達や視覚機能に課題がある場合は、ドリルよりも先に土台を育てる活動が必要です。
11. 「書けない」と「学べない」は違う ― 長期的な視点で
書字だけにとらわれない
字を書くことが苦手だからといって、学ぶ力が低いわけではありません。お子さまには、書字以外にも多くの強みがあるはずです。
- 話して理解する力
- 耳で聞いて覚える力
- 考える力
- 想像する力
- 人と関わる力
書字の困難にばかり目を向けるのではなく、お子さまの得意なこと、好きなことを伸ばしていく視点も大切です。
多様な学び方がある
書くこと以外にも、学ぶ方法はたくさんあります。
- 音声で録音する
- タブレットで入力する
- 口頭で発表する
- 絵や図で表現する
- 動画で学ぶ
お子さまに合った学び方を見つけることが、将来の可能性を大きく広げます。
長期的な視点を持つ
発達の特性は、成長とともに変化していきます。今は難しいことも、適切な支援と経験を重ねることで、できるようになることがあります。
また、社会に出てからは、書字の技術よりもコミュニケーション能力や問題解決能力の方が重要になる場面も多くあります。
「今、きれいな字が書けるか」よりも、「学ぶことを好きでいられるか」「自分に自信を持てるか」という長期的な視点を大切にしてください。
12. まとめ
この記事のポイント
字を書くことが苦手な理由を理解する
- 書字には、微細運動・視知覚・目と手の協応・空間認知・姿勢保持など、複数の能力が必要
- 発達障害やグレーゾーンのお子さまは、これらの能力に凸凹があることがある
- 発達性協調運動症(DCD)は5〜8%の子どもに見られ、書字困難と深く関係している
無理な練習は逆効果
- 練習だけでは根本的な改善につながりにくい
- 無理な練習は、書くこと嫌いや自己肯定感の低下を招く
- 結果(きれいに書けたか)よりプロセス(取り組んだこと)を認める
段階的なアプローチが大切
- 書く前に「土台」を育てる(指先遊び、全身運動、お絵描きなど)
- 書きやすい道具・環境を整える
- 量を減らし、できる範囲で取り組む
- 代替手段も活用する
必要に応じて専門家に相談する
- 心理面に影響が出ている場合は早めに相談
- 相談することは、適切な支援につなげる第一歩
保護者の方へ
字を書くことが苦手なお子さまには、必ず理由があります。その困りごとに気づき、理解しようとすること自体が、すでに大きな支援です。
焦らず、比べず、お子さまのペースを大切にしながら、少しずつ進んでいきましょう。
一人で抱え込む必要はありません。専門機関や教室の力を借りることも、お子さまと保護者の心を守る大切な選択です。
当教室でのサポートについて
お子さまの「字を書くことが苦手」という困りごとは、早く気づき、適切に関わることで大きく変わっていきます。
当教室では、無理に書かせる指導は行いません。 一人ひとりの発達段階や特性を丁寧に見極めたうえで、その子に合った学びの形をご提案しています。
当教室の特徴
完全個別指導
お子さま一人ひとりに合わせたオーダーメイドのプログラムを提供します。感覚統合を促す遊び、ビジョントレーニング、微細運動を育てる活動など、お子さまの特性に応じてアプローチを組み合わせます。
受験塾が運営する学習サポート
単なる療育にとどまらず、将来の学習にもつながる支援を行います。書字の土台を育てながら、お子さまの学ぶ力を総合的に伸ばしていきます。
無料体験のご案内
「このままで大丈夫だろうか」 「一度、専門家の意見を聞いてみたい」
そう感じられたときが、最初の一歩です。
無料体験では、現在のお困りごとを伺いながら、ご家庭での関わり方も含めて丁寧にお話しさせていただきます。
どうぞお気軽にお問い合わせください。
お子さまが安心して学べる環境づくりを、私たちが全力でサポートいたします。
参考文献
主要文献
- 辻井正次・宮原資英・澤江幸則・増田貴人・七木田敦 編著『発達性協調運動障害[DCD]』金子書房、2019年
- 宮原資英『発達性協調運動障害―親と専門家のためのガイド―』スペクトラム出版、2017年
- 北出勝也 監修『発達の気になる子の学習・運動が楽しくなるビジョントレーニング』ナツメ社
学術論文・研究資料
- 白石純子他「発達性協調運動症のある子どもの書字困難の特徴と感覚統合療法の効果」日本LD学会誌、2021年
- 森川純子・中川瑛三・加藤希歩他「書き写すことに困難さのある子どもへの感覚統合療法の効果について」感覚統合研究、2018年
専門機関の資料
- 厚生労働省「DCD支援マニュアル」令和4年度障害者総合福祉推進事業(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001122260.pdf)
- 発達障害情報・支援センター「発達性協調運動症」(https://hattatsu.go.jp/)
- 国立成育医療研究センター「ディスレクシア」(https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/007.html)
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