「どうしてうまく伝わらないの?」と悩む保護者の方へ

目次
はじめに ― 保護者の方へのメッセージ
「お友だちとうまく関われない」
「相手の気持ちを考えて行動してほしいのに」
「何度説明しても、伝わっていない気がする」
お子さまの子育ての中で、こうした思いを抱えながら、「自分の関わり方が悪いのではないか」と日々悩んでいらっしゃる保護者の方も多いのではないでしょうか。
最初にお伝えしたいのは、それは保護者の育て方の問題ではない、ということです。
自閉スペクトラム症(ASD)は、さまざまな遺伝的要因が複雑に絡み合って生じる脳機能の発達の違いに起因するものであり、育て方や家庭環境が原因となることはありません。このことは、多くの研究や専門機関によって明確に示されています。
この記事では、自閉症のお子さまが持つ社会的コミュニケーションの特性について理解を深め、日常生活で実践できる具体的な支援方法をお伝えします。お子さまの特性を理解することで、保護者の方も肩の力を抜いて、より良い関わり方を見つけていただけることを願っています。
第1章:自閉スペクトラム症とは ― 基本的な理解
1-1. 自閉スペクトラム症(ASD)の定義
自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)は、社会的コミュニケーションおよび対人相互作用における持続的な困難と、限定された反復的な行動・興味・活動のパターンを主な特徴とする発達障害です。
以前は「自閉症」「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害」など、別々の診断名が用いられていましたが、2013年に発表されたDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)において、これらは「自閉スペクトラム症」という一つの連続体(スペクトラム)として捉えられるようになりました。
「スペクトラム」という言葉が示すように、特性の現れ方や程度は一人ひとり大きく異なります。知的発達に遅れのない方もいれば、知的障害を伴う方もいます。言語発達についても、流暢に話せる方から、言葉を使ったコミュニケーションが難しい方までさまざまです。
1-2. 有病率と発見の時期
最近の研究では、ASDの有病率は約2%程度(50人に1人程度)と報告されており、決して珍しい特性ではありません。男性の方が女性よりも数倍多いとされていますが、女性の場合は特性が見えにくく、診断が遅れるケースも指摘されています。
多くの場合、症状は生後まもなくから現れ始め、1歳半健診や3歳児健診で気づかれることが多いです。ただし、知的発達に遅れがない場合などは、学校生活が始まってから、あるいは大人になってから診断されるケースも少なくありません。
1-3. 原因について ― 「育て方」ではない理由
ASDの原因は、さまざまな遺伝的要因が複雑に絡み合って生じる脳機能の発達の違いであることが、科学的研究によって明らかにされています。
これは先天的(生まれつき)の特性であり、育て方や家庭環境、しつけの方法が原因となることはありません。
かつて「冷淡な母親の養育態度が原因」という誤った説が広まったことがありましたが、これは完全に否定されています。もしお子さまの状態について周囲から心ない言葉をかけられることがあっても、決してご自身を責める必要はありません。
第2章:社会的コミュニケーションの特性 ― 「見えにくい困りごと」
2-1. 社会的コミュニケーションとは
私たちは日常生活の中で、言葉だけでなく、表情、声のトーン、視線、身振り手振りなど、さまざまな手段を使ってコミュニケーションを取っています。また、場の雰囲気を読んだり、相手の立場に立って考えたり、暗黙のルールを理解したりすることで、円滑な人間関係を築いています。
これらは多くの人にとって自然に身につくものですが、ASDのお子さまにとっては、意識的に努力しても難しいことがあります。これは「やる気がない」「わがまま」というわけではなく、脳の情報処理の仕方が異なるためです。
2-2. 「心の理論」という視点
発達心理学では「心の理論(Theory of Mind)」という概念があります。これは、他者にも自分とは異なる考えや感情、信念があることを理解し、他者の心の状態を推測する能力のことです。
定型発達のお子さまは4〜6歳頃にこの能力を自然に獲得していきますが、ASDのお子さまはこの獲得に時間がかかったり、獲得しても実際の場面で活用することが難しかったりすることがあります。
たとえば、「自分が言ったことが相手にどう受け取られるか」を想像することが難しく、悪気なく相手を傷つける発言をしてしまうことがあります。これは相手への思いやりがないのではなく、相手の視点に立つことが難しいためです。
また、ASDのお子さまは、他者の心を理解するときに、定型発達のお子さまが直感的に行っていることを、意識的に頭で考えながら行うことが多いと言われています。これは非常にエネルギーを消耗することであり、社会的な場面で疲れやすい理由の一つです。
2-3. 具体的な困難の現れ方
ASDのお子さまが経験する社会的コミュニケーションの困難は、年齢や発達段階によって異なる形で現れます。
【乳幼児期】
・あやしても目が合いにくい、反応が乏しい
・指さしをして興味を共有することが少ない
・手を振る「バイバイ」のとき、手のひらを自分に向ける
・名前を呼んでも振り向きにくい
【幼児期〜学童期】
・一人遊びを好み、集団遊びに入りにくい
・会話が一方的になりがち(自分の興味のある話題ばかり話す)
・言葉を文字通りに受け取り、冗談や比喩が理解しにくい
・場の雰囲気や暗黙のルールがわかりにくい
・相手の表情や声の変化に気づきにくい
【思春期以降】
・友人関係の深め方がわからない
・グループでの会話についていけない
・社会的な場面で過度に緊張する
・相手との適切な距離感がつかめない
2-4. 「わかっていない」のではなく「わかり方が違う」
何度注意しても同じことを繰り返すと、「どうしてわかってくれないの?」と感じることがあるかもしれません。しかし、多くの場合、お子さまは「わかっていない」のではなく「わかり方が違う」のです。
たとえば、「ちゃんとしなさい」「きちんと片付けなさい」といった抽象的な指示は、何をどうすればよいのか具体的にイメージすることが難しい場合があります。「おもちゃを箱に入れて」「椅子を机の下に入れて」といった具体的な指示の方が理解しやすいことが多いのです。
また、ASDのお子さまは視覚的な情報処理が得意なことが多いため、口頭での説明よりも、絵や写真、文字で示した方が理解しやすいこともあります。
第3章:こだわり・反復行動の特性 ― もう一つの大きな特徴

3-1. こだわりの強さとは
ASDのもう一つの大きな特徴として、「限定された反復的な行動・興味・活動のパターン」があります。これは一般的に「こだわり」と呼ばれることが多いです。
こだわりの現れ方は人それぞれですが、以下のような例があります。
・同じ服しか着たがらない
・いつも同じ道順でないと不安になる
・物の配置が変わると落ち着かない
・特定の話題に非常に詳しく、そればかり話す
・同じ動作を繰り返す(手をひらひらさせる、くるくる回るなど)
3-2. こだわりの背景にあるもの
こうしたこだわりは、「わがまま」や「頑固」ではなく、予測不能な状況に対する不安への対処方法として理解することができます。
ASDのお子さまは、変化や予期せぬ出来事に対して強い不安を感じやすい傾向があります。「いつも同じ」であることは、お子さまにとって安心感を得るための重要な手段なのです。
また、こだわりを無理に取り上げたり、急に中断させたりすると、パニックや癇癪を引き起こすことがあります。こだわりを否定するのではなく、その背景にある不安を理解し、安心できる環境を整えることが大切です。
3-3. 感覚の過敏さ・鈍感さ
ASDのお子さまの多くは、感覚の処理においても独特の特徴を持っています。特定の感覚に対して非常に敏感(過敏)であったり、逆に鈍感であったりすることがあります。
【過敏の例】
・大きな音や突然の音が苦手(聴覚過敏)
・特定の肌触りの服が着られない(触覚過敏)
・特定の食べ物の食感が苦手(味覚・触覚過敏)
・明るい光がまぶしすぎる(視覚過敏)
【鈍感の例】
・痛みに気づきにくい
・暑さ・寒さを感じにくい
・お腹が空いていても気づかない
これらの感覚特性は、お子さまの「困った行動」の背景にあることも多いです。たとえば、給食を食べられないのは「わがまま」ではなく、感覚過敏が原因かもしれません。お子さまの行動の背景を理解することで、適切なサポートにつなげることができます。
第4章:実践的な支援方法 ― 日常生活で今日からできること
4-1. コミュニケーションの工夫
ASDのお子さまへの効果的なコミュニケーション方法について、具体的なポイントをご紹介します。
【ポイント1:短く、具体的に伝える】
一度にたくさんの指示を出すと混乱してしまうことがあります。「おやつよ。座って食べてね」のように複数の指示が含まれている場合は、まず「座ってね」と一つの指示を伝え、それができてから次の指示を出すようにしましょう。
× 「ちゃんとしなさい」「きちんと片付けて」
○ 「おもちゃを箱に入れて」「本を本棚に戻して」
【ポイント2:視覚的な支援を活用する】
ASDのお子さまは、耳で聞いた情報よりも、目で見た情報の方が理解しやすいことが多いです。口頭での説明に加えて、絵や写真、イラスト、文字を使うと効果的です。
・朝の支度の手順を絵カードで示す
・約束事をホワイトボードに書いて貼っておく
・タイマーを使って残り時間を「見える化」する
【ポイント3:肯定的な言葉で伝える】
「〜してはダメ」という否定的な言い方よりも、「〜しようね」という肯定的な言い方の方が理解しやすく、行動につながりやすいです。
× 「走っちゃダメ」
○ 「歩こうね」
【ポイント4:注意を引いてから話す】
お子さまが何かに集中しているとき、離れた場所から声をかけても指示が入りにくいことがあります。近づいて、視野に入り、注意がこちらに向いてから話しかけましょう。
【ポイント5:気持ちを代弁する】
お子さまが自分の気持ちを言葉で表現することが難しい場合、大人が「〇〇したかったんだね」「悲しかったんだね」と気持ちを言葉にしてあげることで、お子さま自身の感情理解を助けることができます。
4-2. 「構造化」という支援の考え方
ASDのお子さまへの支援として、世界的に効果が認められている方法に「構造化」があります。これは、アメリカ・ノースカロライナ州で開発されたTEACCHプログラムの中核をなす考え方です。
「構造化」とは、お子さまが「今、何をすればよいか」「次に何が起こるか」を明確に理解できるよう、環境や活動を整理することです。
【時間の構造化:スケジュールを見える化する】
一日の流れをスケジュール表で示すことで、先の見通しを持つことができます。「次に何があるかわからない」という不安を軽減し、安心して行動できるようになります。
・絵カードを使ったスケジュールボード
・時計のイラストと活動を対応させる
・「終わったらカードを外す」ルールで、進行状況を可視化
【空間の構造化:場所と活動を結びつける】
「ここでは○○をする」という場所と活動の結びつきを明確にすることで、混乱を防ぎます。
・勉強する場所、遊ぶ場所、食事する場所を分ける
・視覚的な仕切りや目印を使う
・落ち着ける「クールダウンスペース」を用意する
【手順の構造化:やり方を明確にする】
活動の手順を視覚的に示すことで、自分で進めていくことができます。
・手洗いの手順を写真で示す
・着替えの順番をイラストで示す
・持ち物チェックリストを作る
4-3. 予定変更への対応
ASDのお子さまは、予定の変更に強い不安を感じることがあります。以下のような工夫が役立ちます。
【事前予告を心がける】
変更がある場合は、できるだけ早く、具体的に伝えます。「今日は○○だったけど、△△に変わったよ」と、視覚的な手段(スケジュール表の変更など)も使って伝えると効果的です。
【変更を「悪いこと」としない】
変更の後に楽しい活動があることを伝えたり、「変更しても大丈夫だった」という成功体験を積み重ねたりすることで、少しずつ変更への耐性をつけていくことができます。
【「終わり」を明確にする】
「あと5分で終わりだよ」「時計の針がここに来たら終わりね」など、活動の終わりを予告し、次の活動への切り替えを助けます。
4-4. パニック・癇癪への対応
パニックや癇癪が起きたときは、以下のポイントを心がけてください。
【安全を確保し、落ち着くまで見守る】
無理に抑えつけたり、大声で叱ったりせず、安全な場所で落ち着くまで見守ります。「大丈夫だよ」と穏やかに声をかけることは有効です。
【気持ちに寄り添う】
落ち着いてきたら、「○○したかったんだね」「嫌だったんだね」と気持ちを受け止めます。すぐに「ダメでしょ」と否定せず、まず気持ちを認めることで、お子さまは「わかってもらえた」と感じることができます。
【原因を探り、予防策を考える】
パニックには必ず何らかのきっかけがあります。感覚的な刺激、予定の変更、疲れなど、原因を探り、次回からの予防につなげましょう。
4-5. やってはいけないこと ― NG対応
支援を考える上で、避けた方がよい対応もあります。
× 曖昧な表現を使う:「適当に」「もう少し」「ちゃんと」などは、具体的に何をすればよいかわかりません。
× 長々と説明する:説明が長くなると、何が大事なポイントかわからなくなります。
× 感情的に叱る:大きな声で叱ると、何が悪かったのかではなく「怒られた」という恐怖だけが残ります。
× こだわりを無理にやめさせる:こだわりは安心のよりどころです。急に取り上げると不安が増大します。
× 他の子と比較する:「○○ちゃんはできるのに」という比較は、自己肯定感を下げるだけです。
× 皮肉や反語を使う:「また散らかして、きれいな部屋ね」という皮肉は、文字通りに受け取られます。
第5章:年齢別・場面別の対応ポイント

5-1. 幼児期の支援
【遊びを通じた関わり】
お子さまの興味・関心のあるものを見つけ、それを基点にしてコミュニケーションを広げていきます。「○○が好きなんだね」と共感を示し、一緒に楽しむ時間を作りましょう。
【生活習慣の定着】
日々のルーティンを視覚的にわかりやすくし、「いつも同じ流れ」で安心して行動できるようにします。成功体験を積み重ねることで、自信を育てていきます。
5-2. 学童期の支援
【学校との連携】
担任の先生や特別支援教育コーディネーターと情報を共有し、学校でも一貫した支援が受けられるよう連携します。家庭で効果的だった方法を学校に伝えることも大切です。
【友人関係のサポート】
友だちとの関わり方を具体的に教えることが役立ちます。「話しかけるときは名前を呼んでから」「順番を守る」など、暗黙のルールを明文化して伝えます。
5-3. 思春期の支援
【自己理解の促進】
自分の特性について理解し始める時期です。得意なこと・苦手なことを一緒に整理し、苦手なことには「助けを求めていい」と伝えることが大切です。
【二次障害の予防】
過剰なストレスや失敗体験の積み重ねは、不安障害やうつなどの二次的な問題につながることがあります。無理をさせすぎず、安心できる居場所を確保することが重要です。
第6章:自己肯定感を育てる関わり
6-1. できないことより、頑張っていることに目を向けて
社会的なやりとりは、ASDのお子さまにとって非常にエネルギーを消耗するものです。周囲が何気なくできていることでも、お子さまにとっては全力で取り組んでいる挑戦かもしれません。
・今日は挨拶ができた
・お友だちのそばにいられた
・嫌な気持ちを我慢できた
・最後まで話を聞けた
こうした小さな「できた」を見つけて、具体的に褒めてあげましょう。「挨拶できたね、素敵だったよ」「最後まで座っていられたね、頑張ったね」と、何ができたかを具体的に伝えることで、お子さまは「自分のどの行動がよかったのか」を理解することができます。
6-2. 得意なことを伸ばす
ASDのお子さまは、苦手なことがある一方で、特定の分野に深い興味を持ち、優れた能力を発揮することがあります。
・記憶力が優れている
・細部に注意が向く
・特定の分野の知識が豊富
・規則性を見つけるのが得意
・一つのことに集中して取り組める
苦手なことを克服させようとするだけでなく、得意なことを伸ばし、それを活かせる場面を作ってあげることで、自信と自己肯定感を育てることができます。
6-3. 「できない」と言える力を育てる
「何でも一人でできるようにならなければ」と思いがちですが、苦手なことに対して「これは苦手です」「助けてください」と言えることも、社会で生きていく上で大切な力です。
お子さまが「できない」と言ったとき、「甘えないで」と突き放すのではなく、「言えてえらいね」と受け止め、どうすればできるか一緒に考える姿勢が、将来の自立につながります。
第7章:保護者自身のケア ― 一人で抱え込まないために
7-1. 保護者のストレスを認識する
ASDのお子さまの子育ては、定型発達のお子さまの子育てとは異なる困難を伴うことが多いです。「思うようにいかない」「将来への不安が拭えない」という気持ちを抱えることは、決して特別なことではありません。
ある研究では、ASDのお子さまを持つ保護者は、非常に高いストレスを抱えていることが報告されています。また、周囲からの理解が得られにくい状況が、そのストレスをさらに強めていることも指摘されています。
「ちゃんと育てなければ」「周りと同じようにさせなければ」と思えば思うほど、心は苦しくなってしまいます。完璧な親である必要はありません。まずはご自身の気持ちを認め、無理をしすぎないことが大切です。
7-2. 専門機関・支援サービスを活用する
一人で抱え込まず、専門家や支援サービスの力を借りましょう。
【相談できる場所】
・発達障害者支援センター(各都道府県に設置)
・市区町村の子育て支援課・発達相談窓口
・児童発達支援センター
・小児科・児童精神科
・学校のスクールカウンセラー・特別支援教育コーディネーター
【利用できるサービス】
・児童発達支援(未就学児向け療育)
・放課後等デイサービス(学齢期向け支援)
・ペアレントトレーニング(保護者向け支援プログラム)
7-3. 同じ立場の保護者とつながる
同じ悩みを持つ保護者との交流は、大きな支えになります。
・親の会への参加
・ペアレントメンター(先輩保護者による相談支援)
・オンラインコミュニティ
「わかってもらえる」という安心感は、孤独感を和らげ、前向きな気持ちを取り戻す力になります。日本自閉症協会の加盟団体は全国の都道府県・政令指定都市にありますので、お住まいの地域の親の会を探してみてはいかがでしょうか。
7-4. 保護者自身の時間を確保する
お子さまのことで頭がいっぱいになりがちですが、保護者自身がリフレッシュする時間を持つことも大切です。
レスパイトサービス(一時的な休息のための支援)などを活用して、自分だけの時間を作ることは、決して「子どもを放置する」ことではありません。保護者が心身ともに健康であることが、お子さまへの良い関わりにつながります。
第8章:長期的な視点 ― 将来を見据えて
8-1. 「治す」ではなく「支える」という視点
ASDは「治す」ものではなく、その特性と共に生きていくものです。重要なのは、お子さまが自分の特性を理解し、それを活かしながら社会で自分らしく生きていけるよう支援することです。
TEACCHプログラムでは、ASDの特性を「障害」ではなく「文化の違い」として捉える考え方があります。無理に「普通」に合わせるのではなく、お子さまの見え方・感じ方を尊重した上で、社会とうまく折り合いをつけていく方法を一緒に探っていくことが大切です。
8-2. 成長とともに変化する支援
お子さまの成長とともに、必要な支援の内容も変化していきます。幼児期に有効だった方法が、学童期には合わなくなることもあります。
定期的にお子さまの状態を振り返り、「今、この子に必要な支援は何か」を見直していく姿勢が大切です。支援は固定的なものではなく、常にお子さまに合わせて柔軟に変えていくものと考えましょう。
8-3. 社会全体での理解促進
お子さまが生きやすい社会を作るためには、家庭での支援だけでなく、社会全体でASDへの理解を深めていくことも重要です。
学校の先生、習い事の指導者、近所の方など、お子さまに関わる人たちに特性を伝え、理解と配慮を求めていくことは、お子さまの環境を良くするための大切な働きかけです。
おわりに ― お子さまのペースを大切に
自閉症の社会的コミュニケーションの困難は、「できないこと」ではなく、「支え方を工夫することで伸ばしていける部分」です。
お子さまは、日々たくさんのことを感じ、学び、頑張っています。その姿を一番近くで見守っている保護者の方も、十分に頑張っていらっしゃいます。
子育てに「正解」はひとつではありません。大切なのは、お子さまの特性を理解し、その子に合った方法を一緒に探していくこと。そして、保護者の方が少し肩の力を抜くことで、お子さまも安心して自分らしさを出せるようになります。
どうか、ご自身を責めすぎず、お子さまのペースを大切にしてあげてください。
困ったときは、一人で抱え込まず、専門家や支援者、同じ立場の保護者の力を借りてください。お子さまとご家族が、安心して過ごせる毎日を築いていかれることを心より願っています。
参考資料・相談窓口
【主要参考文献】
・DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル(アメリカ精神医学会)
・佐々木正美『自閉症児のためのTEACCHハンドブック』(ヒューマンケアブックス)
・高橋秀俊・神尾陽子「自閉スペクトラム症の感覚の特徴」精神神経学雑誌
・Baron-Cohen, S. et al. (1985). Does the autistic child have a ‘theory of mind’? Cognition
【専門機関ウェブサイト】
・発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター): http://www.rehab.go.jp/ddis/
・発達障害教育推進センター(国立特別支援教育総合研究所): https://cpedd.nise.go.jp/
・一般社団法人 日本自閉症協会: http://www.autism.or.jp/
・すまいるナビゲーター(大塚製薬): https://www.smilenavigator.jp/asd/
【相談窓口】
・発達障害者支援センター:各都道府県に設置。お住まいの地域のセンターは「発達障害者支援センター + 都道府県名」で検索できます。
・市区町村の子育て支援課・発達相談窓口:お住まいの市区町村役所にお問い合わせください。
・児童相談所:子どもに関するあらゆる相談を受け付けています。
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