2025.02.21

幼児期の「運筆力」と脳・学習発達の関係【最新研究】

投稿日時:2025.02.21
最終更新日時:2025.02.25

幼児期に鉛筆やクレヨンなどでお絵かきや文字を書く練習をすることは、ただ字が上手になるだけでなく、子どもの学習能力脳の発達にも良い影響を与えると言われます​。

近年の研究論文でも、こうした運筆力(筆を運ぶ力)と認知発達の関連が注目されています。本記事では、「運筆力」とは何か、そのメリット、右利きと脳機能の関係、そして家庭でできる具体的な練習方法について、最新の知見を踏まえて解説します。

運筆力とは何か

運筆力(うんぴつりょく)とは、鉛筆やペンなどの筆記用具を思い通りにスムーズに動かすための手先の巧みさやコントロール力のことです​。

簡単に言えば、紙の上で筆を自由自在に運んで線や文字を書く能力を指します。運筆力が高い子どもは、鉛筆の持ち方が安定し、適切な筆圧でまっすぐな線や細かい形を描くことができます。逆に運筆力が未発達だと、線がふらついたり、筆圧の調整が難しかったりして、字を書くのに苦労します。

運筆力は専門的には微細運動能力(ファインモータースキル)の一部です。​

指先や手首の小さな筋肉を使った巧緻な動きと、目で見た情報を手で再現する眼と手の協調(視覚-運動統合)の能力が土台となっています​

幼児期はこの運筆力が急速に発達する時期で、小学校入学前までに基礎を身につけておくことが望ましいとされています。

運筆力を養うメリット

幼児のうちに運筆力を鍛えておくことには、さまざまなメリットがあります。研究結果や専門家の見解から、主な利点をいくつか見てみましょう。

集中力の向上: 運筆練習のような細かな作業に取り組むことで、子どもの集中力が養われます。実際、運筆力と子どもの集中力には深い関係があるとされ、幼児期に運筆力を高めておくと集中して文字を書くことができ、学習中も注意力を持続できるようになるとの報告があります​。また、運筆力が向上すると文字を書くことへの苦手意識が減り、学習への意欲も高まる傾向があります​

手先の器用さ: 繰り返し鉛筆やクレヨンを使うことで指先の巧緻性が発達します。小さな丸や線を描いたり、塗り絵で枠からはみ出さないように色を塗ったりする練習は、手指の細かい筋肉を鍛え、物をつまむ・はさみを使うといった他の日常動作にも良い影響を及ぼします。手先が器用になると、自信を持って色々な作業に取り組めるようになります​。

学習能力の向上: 運筆力はそのまま学習準備能力につながります。近年のメタ分析研究によれば、幼児期の微細運動スキル(運筆力を含む)と後の学習成績との間には明確な正の相関関係があることが示されています​

特に、視覚と運動の統合(例えば目で見た形を写し取る力)は算数の能力と強く結びつくという結果が報告されています​。frontiersin.org

また、イギリスの長期縦断研究では、幼児期に優れた微細運動能力を持つ子どもは思春期に高度な推論力を示し、それが読解力や数学成績の向上に寄与していたことが分かっています​。pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

つまり、小さな頃の運筆練習が将来の学力向上の土台を作る可能性があるのです。

創造力・表現力の発展: クレヨンや色鉛筆で自由にお絵かきすることは、子どもの創造力を育みます。最初はぐちゃぐちゃと線を描くだけでも、子どもにとっては表現の第一歩です。運筆力がついて筆を思い通りに動かせるようになると、頭の中のイメージを絵や形で表現できるようになります。例えば、ぐるぐると渦巻きを描いたり、大きな丸や三角を描いたりする中で、豊かな発想力や空間認識力が育っていきます​。

自由に描けることで「描くって楽しい!」という気持ちが芽生え、創造的な遊びに夢中になれるのもメリットです。

記憶力・読み書き能力の強化: 手を使って文字を書く行為は、記憶の定着にも役立ちます。五歳児を対象としたある脳科学研究では、自分で鉛筆で文字を書いた経験があると、ただ見たりタイピングしたりした場合に比べて、その文字を見たときに読字に関わる脳の領域が活性化することが示されました​。

この結果は、幼児が手書きすることが文字の認識や読みの習得を促進することを意味しています​

つまり、運筆練習を通じて読み書き能力や記憶力の向上も期待できるのです。

以上のように、運筆力を高めることは集中力巧緻性学習面創造性など多方面に良い影響をもたらします。幼児期に運筆練習を積んでおくことは、小学校以降の学びの姿勢や成績にもプラスに働くでしょう​

右利きと脳:言語能力・論理的思考への影響

子どもの利き手(右利き・左利き)は脳の働きと深く関係しています。人間の脳は左右で役割がやや異なり、一般に左脳は言語の処理や計算、論理的思考を司り、右脳は空間認識や創造的な思考、直感に関与すると言われます​。

そして脳は体の反対側を制御するため、右手を使う動作は主に左脳によってコントロールされています。このため、多くの右利きの人では左脳が優位となり、言語能力や論理的思考力の発達と結びついているのです​。

幼児が鉛筆を使って文字や図形を右手で描くとき、左脳の運動野や言語関連領域が活性化します​。

右手での運筆練習を積むことで、左脳の神経回路(言語や分析を担う領域)が刺激され、強化される可能性があります。その結果、ひらがなの読み書きや言葉の理解、物事を筋道立てて考える力が育まれると考えられます。

実際、歴史的に見ても人類は右利きが主流です。その背景には、「左脳=言語・論理脳」として発達してきたことが関係するとする説もあります​。

道具を使った論理的な作業や言語の発展が、右手優位(左脳優位)の人を増やした可能性があるという指摘です​。

もちろん左利きの子どもにもそれぞれの長所があり、無理に矯正する必要はありません。ただ、右利きの子どもが運筆練習によって左脳を活発に使う体験を積むことは、言語や論理の能力開発にプラスに働くでしょう。

幼児教室や家庭でできる運筆力アップの方法

運筆力は、家庭でのちょっとした工夫や継続的な練習によって高めることができます。多くの幼児教室でも取り入れられている運筆トレーニングのエッセンスを参考に、家庭でできる具体的な方法をいくつか紹介します。小学校受験を視野に入れているご家庭では、早めに対策しておくと安心です​。

年齢に合ったお絵かきから始める: 運筆力は一朝一夕には身につきません。まずは1~2歳頃から、クレヨンで自由になぐり描き(ぐるぐると大きな円を描く、お絵かき帳に線を引くなど)をさせてあげましょう。太く握りやすいクレヨンや幼児用マーカーを使い、紙いっぱいに伸び伸びと線や点を描かせることで、腕や手首の大きな動きを発達させます​

この時期は持ち方にこだわらず、「描くって楽しい!」と感じることが一番大切です。

線描写や迷路遊び: 3歳前後になったら、まっすぐな線や曲線を引く練習を取り入れてみましょう。例えば、縦線や横線をなぞるワーク、ぐるぐると渦巻きを描く練習、シンプルな迷路遊びなどは楽しみながら筆のコントロールを鍛えられます​。

最初は大きな線から始め、徐々に狭い迷路や小さな図形を描けるようにステップアップします。線を引く練習は、手と目の協調性を養い、後のひらがなのなぞり書き練習への橋渡しにもなります。

正しい持ち方・姿勢の習慣: 運筆力を高める上で、鉛筆の正しい持ち方書くときの姿勢も重要なポイントです。幼児教室の指導でもまず最初にペンの持ち方(3本指で持つトライポッドグリップ)や椅子に座る姿勢を教えています​。

家庭でも、4歳頃になり鉛筆を使い始める際には、親御さんがお手本を見せながら優しく正しい持ち方を促しましょう。正しく持てるようになると指の可動域が広がり、筆圧コントロールもうまくできるようになります​

姿勢が安定し疲れにくくなることで、長く集中して書き続けることができます。結果的に文字の形も整いやすくなり、子ども自身の「書けた!」という自信にもつながります​。

運筆ドリルやプリントの活用: 市販の運筆練習帳や幼児向けドリルを活用するのも効果的です。幼児教室や通信教材では、年齢に合わせた運筆プリントが用意されており、点線をなぞる、○△□といった図形を描く、迷路を解く、色ぬりをするといった課題が段階的に配置されています​。

例えば、公文式の「ずんずん」教材は鉛筆を持てない年齢の子でもクレヨンで線描き遊びができるよう工夫されており、楽しみながら運筆力を高められるとされています​。kumon.ne.jp

こうしたドリルを日々の家庭学習に取り入れ、少しずつレベルアップしていくと良いでしょう。「今日は上手に線が描けたね!」と褒めながら進めることで、子どもも達成感を味わいながら続けられます。

日常生活での練習機会: 運筆力は机の上だけでなく、日常の遊びや活動の中でも伸ばせます。例えば、お絵かき帳にお手紙を書いてみるごっこ遊びや、お気に入りのキャラクターの絵を一緒に描く時間を作るのも良い刺激です。折り紙で折った作品に顔を描いたり、砂場に棒で絵を描いたりするのも立派な運筆練習になります。また、ハサミで紙を切る、シールを指で剥がして貼る、粘土をこねて形を作るといった遊びも指先の巧緻性を養うのでおすすめです。楽しみながら指先を使う経験を増やすことが、結果的に鉛筆もうまく扱える手の発達につながります。

なお、小学校受験を予定している場合は、運筆力の習熟度が思わぬ場面で合否に影響することもあります。実際、小学校受験の考査では、ペーパー試験中に○印や線描写、迷路・点つなぎ課題などを通じて子どもの運筆スキルがチェックされるケースがあります​。

家庭で十分練習を積んでいないと、試験本番で時間内に丁寧に書き込めない恐れもあります。幼児教室でも「運筆」の対策は重視されており​、家庭でも日頃から紙と鉛筆に親しんでおくことが大切です。

まとめ

幼児期における「運筆力」の向上は、単に字を書く技能の習得にとどまらず、脳の発達学習意欲の向上に良い影響をもたらすことが最新の研究からわかってきました。​

​運筆力を高めることで集中力や記憶力が伸び、言語や論理の基盤となる能力が育まれます。また、自分で文字や絵を自由に書けるようになると創造力が刺激され、学ぶこと自体を楽しめる子に成長します。幼児教室などでも運筆カリキュラムが重視されていますが、家庭でも今日から取り組める工夫はたくさんあります。ぜひ親子でお絵かきや線なぞりにチャレンジし、遊びの中で運筆力を伸ばしていきましょう。それが将来の学力向上や小学校受験対策にもつながり、何よりお子さんの自己表現の幅を広げるはずです。子どもの小さな手が描く一筆一筆が、未来の大きな学びへとつながっていくことでしょう。​

おわりに:幼児教室の活用と無料体験レッスンのススメ

運筆力の向上は、お子さんの学習準備や小学校受験対策において非常に重要な要素です。家庭でできる取り組みもたくさんありますが、「何から始めればいいか分からない」「我流で教えて正しい持ち方が身につくか不安」と感じる保護者の方も多いでしょう。そうした場合は、ぜひ幼児教室アイキューの活用を検討してみてください。アイキューでは、運筆力を含めた基礎的な学習スキルを総合的に伸ばすお手伝いをしています。プロの目線で適切な指導が受けられるだけでなく、親御さんもお子さんへの教え方のヒントを得ることができます。

無料体験はこちらより

運筆力向上のススメ――お子さんの未来につながる大切なステップです。楽しく継続できる方法で運筆練習に取り組み、必要に応じて専門家の力も借りながら、ぜひお子さんの「書く力」を育んであげてください。小さな積み重ねが、大きな自信と学びの意欲につながります。今から始めた取り組みが、やがて迎える小学校生活や小学校受験での成功、そしてその後の学習意欲の向上につながっていくことでしょう。お子さんの成長をサポートするために、できる一歩から始めてみてください。きっとその先に、字を書くことが好きで学ぶことに意欲的なお子さんの姿が待っているはずです。ぜひ一緒に運筆力向上に取り組んでいきましょう。

参考文献

Frontiers in Sports and Active Living (2024). Research progress on the relationship between fine motor skills and academic ability in children Retrieved from https://www.frontiersin.org/

Fine motor skills during early childhood predict visuospatial deductive reasoning in adolescence(2022). pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

公文教育研究所 (2024). ずんずん教材の効果. Retrieved from https://www.kumon.ne.jp/

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